選手権大会11回目出場3位
世界大会出場
東西対抗大会出場
都道府県対抗大会3位
全国警察官大会団体一部3位2回・個人2位
国体優勝2位3位各1回
【一流の技術】
膕が入れば腰が入る 足腰が支える強靭な一本
米屋勇一 教士七段
米屋選手が現在に到るまで、心掛けてきたことの一つに「左のおさまり」がある。
腰が入ったまま攻めるために、左半身を重視してきました。とくに、腰や足といった点です。腰が入るためには膕を適度に張って、曲がらないようにしないといけません。
逆にこの部分がおろそかになると、足幅や重心のバランスに偏りが出てきます。
腰を意識するようになって必然的に膝についても意識が向いてきた。
「現役のころは、足幅が若干広かったのですが、最近は狭めるようになりました。この方が、体が安定します。剣道ではこれが崩れないまま相手を崩して打つことが理想ですが、相手を攻める前に充実した体制をつくる努力も大切かと思います。普段からこういった点を素振りや打ち込み稽古で心がけるようにしています。」
【膝で常に打てる構えをつくる】
米屋勇一選手といえば、ピンと背筋を張り、腰の入った姿勢のまま相手に圧力を与え攻め崩す様子が印象的だ。あの強い攻め、打突は「常に打てる構え」を構築してきたたまものだ。
即座に対応できる体制を常に維持するために、膝についてのポイントを聞いた。
「私自身は、左半身の収まりを一番大事にしてきました。足・腰がしっかりしてないと、攻める体勢は維持できません。そのためには、膕が適度に張っているかどうかが重要なポイントになります。張りすぎず、緩みすぎず、といったバランスのいい状態を大切にしています」
左半身が収まっている状態とは、具体的にどのようなものだろうか。米屋選手は、「姿勢が曲がっていないか」「腰が入っている状態かどうか」「左拳が中心におさまっているかどうか」「足幅が広すぎないかどうか」といった点を挙げた。
「今挙げたポイントについては、膝が曲がるとすぐに支障が出てきます。それほど腰は大事なポイントなんですね。膝が曲がると打突力が弱くなる上、左足の引きつけ方が緩慢になってしまう、などあまりいいことがありません。基本的な要素だからこそ、疎かにしたくない部分ですね」
膝と基本要素
【常に打てる構えを維持するための稽古】
膕が適度に張っている状態は、幾度も稽古を重ねて作られる。試合や審査の舞台は予想以上にハードなものであり、しっかりと稽古を積んでいないと思わぬところで左膝が緩むこともある。
「しっかり稽古を積んでいないと、体力がなくなった時や攻め合いの中で相手にグッと攻められた時などに崩れやすいですね。素振りなどの段階から、意識して稽古する必要があると思います」
構えは鏡を見ながら、足幅や重心位置などを確認する。
「足幅は、以前に比べてだいぶ狭くなりました。その方が安定します。重心のバランスは、私の場合左に6、右に4、といったところでしょうか。左のお尻を意識して、膕が緩まないようにしています。ここが緩むと重心のバランスが崩れ、ひどいケースになると、左のかかとが床についてしまいます。それでは、相手に攻めが伝わりません」
左がゆるめば、打つ体制が崩れてしまう。ひいては相手に打つチャンスを与えてかねない。
「素振りの時も意識していますが、特に左の引きつけを速くするようにしています。二拍子の打突は体が上下動してしまうので、注意しています」
膝とトレーニング
【下半身を強化して実践につなげる】
米屋選手は8年前にアキレス腱を断裂して以来、下半身の強化に努めてきた。「もう8年もたちましたが、下半身のトレーニングは欠かさず行っています」 現在、埼玉県警察剣道特練でもトレーニングを行っているが、その中にも下半身の強化を目的とするものもある。
膝と打突
【膝で一本を決める。より鋭く技を出す】
膕が適度に張っていると、左腰、左拳も安定し、相手により攻めが伝わりやすくなる。より鋭い一本になる。
「膝が安定すると体重が乗った攻めになるので、相手に伝わる圧力が違ってくるとおもいます。逆に言うと、重心がしっかりしないと、相手にとってはさほど脅威ではないと思います」
間合いを詰める際も左足の引付に留意する。右足を前に出したのなら、その分左足もすぐに引き付ける。攻め合いの中では「打とう」という意識や相手の攻めに気を取られると足幅が広くなってしまうケースがある。これを防ぐには、普段の基本稽古で気を付けるしかない。